ほどよい行列には並んでみたくなる

お客様から見れば、キッチンカーは“いつもの場所”に突然現れる謎の飲食店で、習慣とは異なる“食との出会い”にワクワクさせてくれる、「非日常」のエンターテイメントです。カラフルにラッピングされた“変わった”クルマから漂う“出来立て”の匂いには人を惹きつける要素しかありませんが、購買意欲にまで至るあと一押しには、“並んでみたくなる”賑わいも必要となってきます。先に誰かがいるところには、より近づきやすく、後ろに続いてみたくなるものです。なので、“行列が絶えない”キッチンカーをつくるには、常に待たせながらも待たせ過ぎない、“人の流れ”をコントロールする絶妙なテクニックも求められるのです。

長い行列は待たせない

賑わいが賑わいを呼ぶという行動原理から考えると、ピーク時の行列は演出的にも不可欠です。ただ、「けっこう待たされそうだな」と感じ取られれば、せっかく興味を抱いたお客様も、早々にその場を離れてしまう結果となります。なので、普段から作業を早め、効率を高める訓練を重ねておいて、本番となる長い行列時は、いつでも最高速のパフォーマンスを提供できるようにしておきましょう。キッチンカーの非稼働日に、注文から商品渡し、お金のやり取りまでを最短距離でこなす“流れ”を身につければ、見栄えの良い滑らかなパフォーマンスとなり、待っているお客様にとっても見ごたえのあるものに変わります。混雑時にサポートスタッフを雇う場合は、車外で行列の誘導をしたり注文を受けたりする役割に専念させるなど、完全分業のシミュレーションでの訓練をしておくのもよいでしょう。「行列だけど早く買えそう」「待ってる時間も退屈しなさそう」と思ってもらえる取り組みが、ワクワク感に溢れた“並びたくなる”行列を生み出すのです。

空いているときは逆に待たせる

長時間(キッチンカーの)営業をしていると、当然“行列のできない”時間帯も生まれます。ただ、待ち人が途切れたキッチンカーは、遠目には若干近寄りがたくなりますので、人の流れが落ち着いてくる時間帯は、意図的に作業速度を落とすなどの工夫で、待ち人がいてくれる状態をなるべく長くキープするとよいでしょう。待たせているお客様も、自分の順番さえ来ていれば、待ち時間もさほど苦にならないものです。なので、スピードに代わる“丁寧な調理&接客”での特別感を提供しましょう。