出発前の仕込みが9割

簡易な厨房設備を一通りそろえているキッチンカーですが、決して全ての調理工程を車内でまかなうわけではありません。調理パフォーマンスを“魅せる”ステージとして、スペースと機材を有効に使うことを意識しましょう。キッチンカーでの営業のメリットを最大限に活かすためには、基本的に90%程度の調理工程を、前日の夜や当日の朝に行える、固定の厨房での事前仕込みで済ませておくことがベストだとされています。

前日の夜、当日の朝を上手に使う

例えば、丼ものやカレーライスの土台となる「ごはん」は、事前に必要な分だけ炊き上げておけば、会場ではよそうだけの作業になります。当日の朝、出発直前の炊き上げであれば、ほかほかの美味しいご飯を、ランチタイムから終日まで十分に提供できます。ごはんをおにぎりとして販売する場合は、具の味付けまでを終わらせて、当日は握るだけにしておきます。カレーは前日のうちからルーを煮込んでおき、具は煮詰まらないよう、当日の朝に炒める段取りで。また丼ものやお弁当のおかずの主役となるお肉は、当日の焼き時間を短縮するために、9割がた焼いておくといいですし、パスタなら麺茹でを当日にする分、ソースは再加熱するだけの状態まで作り終えておくとよいでしょう。つまり、「キッチンカーのパフォーマンスとしては地味だけど大事」で「前日仕込みで十分」と思える工程は、キッチンカーよりも充実した厨房環境(家庭用レベルのキッチンを含む)で全て済ませておけばよいのです。

一番魅せられる仕上げだけを現場で

カレーならかける、肉なら焼く、おにぎりなら握る、パスタなら茹でたての麺にソースをかける…といったように、パフォーマンスで魅せる「余白」として、全調理工程の10パーセント程度を残しておくことが大事です。オペレーションの効率化にも繋がりますが、なによりも、お客様に、地味な工程を省き、一番華やかなパフォーマンスだけを見せ続けられるというメリットもあるんです。そして、座って待つ環境があるレストランなどと違って、お客様は外で立って並んで待ってくれてますので、「待ってる時間も醍醐味」なんて感情を期待してはいけません。肉を焼くパフォーマンスは1分見られたら十分です。テンポよく、かっこよく、お客様に出来立てを提供しましょう。